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November 23, 2004

河合奈保子・SKY PARK

 中期・河合奈保子の方向性を決定することになったアルバム。

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 「SKY PARK」は、初のシンガー志向アルバムであった「あるばむ」の次に発売された(1983.6.1.発売)。「あるばむ」同様(当時はLPレコードなので)A面とB面とで違う作家を起用し、異なるアプローチから歌手「河合奈保子」の魅力を引き出している。A面は作曲を大御所・筒美京平に依頼、作詞は、来生えつこ、秋元康、売野雅勇の三氏で競作の形を取った。B面は「あるばむ」の手法で、石川優子に作詞作曲を全曲依頼している。

 このアルバムについて特筆しなければならないのは、奈保子ちゃんと、売野雅勇氏、石川優子氏との出会いではないだろうか。

 当時、新進気鋭の作詞家であった売野雅勇氏は、中森明菜「少女A」(1982.7.28.発売(*1))で一躍、ヒット作詞家となった。危うい思春期少女の心情を綴ったこの歌は、それまでのアイドル像を一変させ、「明菜伝説」の始まりを告げた。1年後、奈保子ちゃんが20歳を迎えるこの年に売野氏を作詞スタッフに迎えたのは、これまでの奈保子像とは違った切り口を見せたいという、制作陣の意気込みであろうか。
 とはいえ、売野氏にとっても、すでにアイドルイメージが定着している、そして彼の描く少女像とは反対側に位置する、奈保子ちゃんに詞を提供することは、かなりの悩みと冒険であったろう。「SKY PARK」での売野氏の作詞は、A-4 「八月のバレンタイン」1曲であるが、その歌詞世界は「少女A」と比べて、いささか丸い。加えて、筒美京平氏のリズミカルなサウンドに乗せているため、歌詞の角が覆い隠されている感じがある。奈保子ちゃんにどこまで大人の表現をさせるか、おそらく「曲先」であろうから、後で担当する売野氏の「大人度」フリカケの振り方に、制作陣も気を揉んだのではないか。結果的には、キャッチーな名曲が出来上がったわけだが、後から思うと、A-1「ちょっぴりパッショネイト」(来生えつこ作詞)の方が、より刺激的な作品となったのは興味深い点だろう。また売野氏にとっては、同日発売のシングル「エスカレーション」を皮切りに、精力的に河合奈保子作品の作詞に関わっていったことは、周知のとおりである。

 「SKY PARK」のエンディングを飾るのは、石川優子氏の作品「Sky Park」。朝日が昇る直前の、澄み切った空気を切り取ったような、さわやかで、かつ神々しささえ感じるこの歌は、聴くたびに私の背筋をゾクゾクさせる。Web サイト「河合奈保子音楽夜話」(*2)で触れられているが、後期の奈保子ちゃんの制作(特に作曲)活動の源泉のひとつに、この「Sky Park」があったのではないかという指摘は、傾聴に値するだろう。(「河合奈保子音楽夜話」は情報量も多く奈保子ファンにとって貴重なサイトです)。
 このアルバムで、「石川優子」というアーティストと出会うことになるが、彼女の作品であるB面の曲は、ある意味で石川調が強く出ている。奈保子ちゃんのボーカルなのだが、仮歌のイメージが強いのか、B-1 「恋人形」などでは、石川氏の歌いグセを、そのまま歌いこなしているような気がする。それは、奈保子ちゃんにとって、音域や声色において、石川優子調がことのほか歌いやすかった、ということになるのではないか。また、おそらくこの頃(もしくはこれ以前)から、曲の制作にみようみまねで取り組み始めた奈保子ちゃんにとって、シンガーソングライター石川優子氏の作品は、きっとお手本となったのであろう。もし、「石川優子」との出会いがなかったとしたら、奈保子ちゃんの1986年以降における豊穣の作品群は、生まれてこなかったかもしれない。

 「走り去る青春を あなたと見つめたい」 「Sky Park」の一節は、大人になってから思い返すと、じつに心の奥深く、感慨深いものである。

(参考 Web)
*1 http://www.ann.hi-ho.ne.jp/harumoto_itou/an01.html
*2 http://canariya.org/music/main05.xhtm

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Comments

お褒めいただき恐縮です(*^_^*)
ご自身の楽曲に対する感想と思い入れと解析のバランスが絶妙で
読んでいて楽しいブログですね(^_-)
私も更新しなくては・・・・・・・・・^^;

Posted by: santaro | November 23, 2004 at 09:51 AM

santaro さま

本文中でも触れましたが「河合奈保子音楽夜話」の情報量とオリジナルの視点からの分析には、いつも感服しています。
河合奈保子という存在を掘り下げていくと、当時の80年代J-POPSの鉱脈が次々と見つかり、奈保子ちゃんの活動の幅の広さを実感しちゃいますね。

もしよかったら、またお立ち寄りくださいませ。

Posted by: ひらりん | November 23, 2004 at 12:18 PM

Thank you very well read allss textt about drsating and ilike it very much

Posted by: cFoodySess | May 21, 2010 at 12:37 PM

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