Eternal Ballads に寄せて 第2章
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女性シンガーの名バラードを集めた「Eternal Ballads」。今回は、結婚に踏み出した女性の心情から始まる。
M-5 「リンダ」 アン・ルイス
結婚式は、一生を、「独身人生」と「既婚人生」に分け隔てる、決別と転生の儀式である。
どんな理想の相手に巡り合えたとしても、それは「独身人生」での出来事。「既婚人生」は、まさにゼロからの旅立ちに他ならない。バージンロードを踏むとき、花嫁は、初めて飛ぶ雛鳥のように臆病なのだ。綺麗な衣装、華美な演出、「独身人生」の知己達、すべて飛び立とうとする彼女を後押しする、道具立てに過ぎない。
そのなかでも、同性の友人からの言葉は、きっと花嫁に、飛び立つ勇気と励ましを与えることができるだろう。
2番の歌詞は英語だが、曲の真髄はこちらの方にある。臆することなく花嫁へのメッセージを解読しよう。
M-6 「部屋とYシャツと私」 平松愛理
結婚することで生まれる寂しさは、幸せの代償なのだろうか。
(専業)主婦にとって、家庭と外(外界)との接点は、ほぼ夫に依存している。夫を失うことは、「部屋にYシャツと私」しか残らないことを、意味するのだ。それは、社会的な死を予感させる不吉なもの。故に、浮気の兆候はわからぬように。本気なら一緒に死のう。天寿のときは見届けて。という願いが湧き出してくる。いずれも、「ひとりにしないで」という切実な叫びだ。
わがままなのではない。降りかかる寂しさの恐怖を、避けようとしているに過ぎないのだ。そのうえで、ふたりでいるかぎり、どんな苦難も平気だという。
語りかける口調とメルヘンチックな伴奏が、甘口のラブソングを彷彿させるが、実のところは、魂の絶唱である。
M-7 「愛・おぼえていますか」 飯島真理
愛する人に、「おぼえていますか」と尋ねるのは、幸せのとき、不安のとき、そして別れのとき。
愛し合っているときに尋ねるのは、心が共にあることを確認するため。愛が冷めたと感じたときに尋ねるのは、このままでいいのか自問するため。そして、愛する人が目の前から消えたあとで尋ねるのは、いとおしい人を、心の中で生き続けさせたいという願い。一度「ひとりぼっち」になった「わたし」が、彼の思い出を胸に、寂しさから抜け出して前に進もうとする姿だ。
だからこの曲は、聴きようによって、幸せのラブソングにも、レクイエムにもなる。
飯島真理のストレートな歌い方が、聴き手の想像をふくらませる。佳曲であろう。
M-8 「ハーフムーン・セレナーデ」 河合奈保子
愛し続けるふたりが離れて暮らすことのせつなさは、互いの想いを知っている分だけ、つよく意識される。
想い募る気持ちは果てしなく心を燃やし、夜風に冷まそうと外に出れば、空に浮かんだ半弦の月。これから満ちるのか、それとも欠けて消え行くのか。運命(さだめ)を占おうにも、月はただ寡黙だ。せめて、愛しい気持ちを伝えて欲しい。こみ上げる涙に、月は中空に滲むだけで、応えない。
長距離恋愛、あるいは不倫…。次に会える日を指折り数える少女の姿。腕の中で強く抱かれたいと願う女性の姿。ふたつの姿を月影に落として、彼女はその日を待ち続ける。
河合奈保子の音域をフルに使ったボーカルは、切なさを込めて次第に力強さを増し、砕けるように終わる。バラード集の中締めとしても、ふさわしい。


Comments
こうして書かれるまで認識してなかったんですが、ハーフムーン・セレナーデって中締めの要素があるんですね。確かに流れはそうだしスケールは大きいし。
私は単純に「さあここから隠れた名曲いってみよう」っていう中盤の始まりみたいな捉え方しか出来てませんでした。うむ、まだ味わい方が足りなかったのかもしれない(笑)
Posted by: MARU | December 08, 2004 at 08:50 PM
ひらりんさん、ご無沙汰しております。
それにしても、何度読んでも、この解釈ステキですね。
「ハーフムーン・セレナーデ」は、実は
86年の紅白歌合戦をイメージして配置しました。
ですので、MARUさんのおっしゃる“中締め”的な
解釈はビンゴ!です。おめでとうございます!(笑)
ひらりんさん、またお時間のある時に
続編教えて下さいね。「窓」が楽しみです~。
Posted by: うすいのたかし | January 12, 2005 at 02:48 AM
うすいのたかしさん
こちらこそご無沙汰しております。
お褒めの言葉をいただいて、たいへん嬉しく思っております。
「Eternal Ballads に寄せて」の続編ですが、当初は昨年内完結の目論見だったのですが、仕事関連の諸事情でバタバタしているうちに、越年してしまいました。(<ちょっと言い訳)
決して続編を諦めているのでも、「Eternal Ballads」がキライになったのでもありませんので、その点はどうぞご安心ください。
年末よりは時間が取れるようになりましたので、ぼちぼち続編に取り掛かろうと思っております。
ご期待に沿えるようなものが出来るどうか、わかりませんが、完結の暁にはご高覧いただければ、幸いです。
Posted by: ひらりん | January 14, 2005 at 01:11 AM