« November 2004 | Main | January 2005 »

December 05, 2004

Eternal Ballads に寄せて 第2章

img015.gif

女性シンガーの名バラードを集めた「Eternal Ballads」。今回は、結婚に踏み出した女性の心情から始まる。

M-5 「リンダ」 アン・ルイス
結婚式は、一生を、「独身人生」と「既婚人生」に分け隔てる、決別と転生の儀式である。
どんな理想の相手に巡り合えたとしても、それは「独身人生」での出来事。「既婚人生」は、まさにゼロからの旅立ちに他ならない。バージンロードを踏むとき、花嫁は、初めて飛ぶ雛鳥のように臆病なのだ。綺麗な衣装、華美な演出、「独身人生」の知己達、すべて飛び立とうとする彼女を後押しする、道具立てに過ぎない。
そのなかでも、同性の友人からの言葉は、きっと花嫁に、飛び立つ勇気と励ましを与えることができるだろう。
2番の歌詞は英語だが、曲の真髄はこちらの方にある。臆することなく花嫁へのメッセージを解読しよう。

M-6 「部屋とYシャツと私」 平松愛理
結婚することで生まれる寂しさは、幸せの代償なのだろうか。
(専業)主婦にとって、家庭と外(外界)との接点は、ほぼ夫に依存している。夫を失うことは、「部屋にYシャツと私」しか残らないことを、意味するのだ。それは、社会的な死を予感させる不吉なもの。故に、浮気の兆候はわからぬように。本気なら一緒に死のう。天寿のときは見届けて。という願いが湧き出してくる。いずれも、「ひとりにしないで」という切実な叫びだ。
わがままなのではない。降りかかる寂しさの恐怖を、避けようとしているに過ぎないのだ。そのうえで、ふたりでいるかぎり、どんな苦難も平気だという。
語りかける口調とメルヘンチックな伴奏が、甘口のラブソングを彷彿させるが、実のところは、魂の絶唱である。

M-7 「愛・おぼえていますか」 飯島真理
愛する人に、「おぼえていますか」と尋ねるのは、幸せのとき、不安のとき、そして別れのとき。
愛し合っているときに尋ねるのは、心が共にあることを確認するため。愛が冷めたと感じたときに尋ねるのは、このままでいいのか自問するため。そして、愛する人が目の前から消えたあとで尋ねるのは、いとおしい人を、心の中で生き続けさせたいという願い。一度「ひとりぼっち」になった「わたし」が、彼の思い出を胸に、寂しさから抜け出して前に進もうとする姿だ。
だからこの曲は、聴きようによって、幸せのラブソングにも、レクイエムにもなる。
飯島真理のストレートな歌い方が、聴き手の想像をふくらませる。佳曲であろう。

M-8 「ハーフムーン・セレナーデ」 河合奈保子
愛し続けるふたりが離れて暮らすことのせつなさは、互いの想いを知っている分だけ、つよく意識される。
想い募る気持ちは果てしなく心を燃やし、夜風に冷まそうと外に出れば、空に浮かんだ半弦の月。これから満ちるのか、それとも欠けて消え行くのか。運命(さだめ)を占おうにも、月はただ寡黙だ。せめて、愛しい気持ちを伝えて欲しい。こみ上げる涙に、月は中空に滲むだけで、応えない。
長距離恋愛、あるいは不倫…。次に会える日を指折り数える少女の姿。腕の中で強く抱かれたいと願う女性の姿。ふたつの姿を月影に落として、彼女はその日を待ち続ける。
河合奈保子の音域をフルに使ったボーカルは、切なさを込めて次第に力強さを増し、砕けるように終わる。バラード集の中締めとしても、ふさわしい。

| | Comments (3) | TrackBack (1)

December 02, 2004

Eternal Ballads に寄せて 第1章

img015.gif

女性シンガーの名バラードを集めた「Eternal Ballads」。そこに広がる女性の恋愛模様を、4パートに分けて紹介してみたい。

M-1 「難破船」 中森明菜
陽は沈んで朝がくる。木は朽ちて森となる。されば、恋は…。
この恋愛の物語は、唐突に恋の終わりから始まる。海のように深く愛したひととの別れは、その海が深く広いほど、衝撃の波は荒ぶれて、嵐のごとく、何度も何度も押し寄せてくる。
そのなかでの「わたし」の存在は、弄ばれるただ1艘の舟だ。「たかが」と強がっていても、いつ果てるともしれない感情の嵐の前には、為す術がない。
中盤の間奏は、吹きすさぶ風、押し寄せる波のように、ストリングスが唸る。サスペンス性を前面に出して印象的だ。

M-2 「木枯らしに抱かれて」 小泉今日子
別れが突然なら、出会いもまた不意にやってくる。
恋の痛手を癒すのは、また恋でしかないという。はじまりは片想いから。ちょっとしたしぐさ。何気ない表情。昨日まで素通りしてなずなのに、なぜこんなにいとおしくなるのだろう。
恋の始まり方は何度目であれ、初恋とかわらない。違うのは、燃え広がる炎の早さか。失ったあとなら、それはなおさら…。
この曲で光るのは鼓動のようなドラムプレイとバグパイプ。恋に踏み出す行進曲(マーチ)のように、彼女を後押しする。

M-3 「恋一夜」 工藤静香
想いがひとつに重なった夜。
心に沸いてくるのは、喜びより、ふたたび失う不安。初恋じゃあるまいし、恋愛を経験すればするほど、幸せは儚く消えゆくものだと知ってしまう。
知っているからこそ、いままさに腕の中に抱かれている「わたしのきもち」に、正直になりたいと思う。いつか失うその時までは…。恋は叶えばこそ、刹那的で、無常の苦しみを与える魔物にもなるのだ。
作曲編曲は後藤次利。恋の深まりに落ちていく姿を、スリリングに演出している。

M-4 「好きにならずにいられない」 岩崎宏美
何度目かの恋が、花を咲かせた。
わたし自身が「好きにならずにいられない」と、恋の魔力にかかったと認めるのは、幸せの光が見えたから。
恋は、心を虜にして自らを生み増やす、ウィルスのようなもの。膨らんでいく恋心は、彼女を光り輝かせるけれど、同時に嫉妬の心も芽生えさせてしまう。「ただ好きでいたい」それだけのため、女性は艶やかさと醜さの二枚の羽をひろげる蝶になるのだろう。これまでとは違う幸せのもとに、飛び立つために。
収録のアカペラバージョンは、岩崎宏美の透明感のあるボーカルが映えて、美しい。


好評なら(笑)次章続きます。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« November 2004 | Main | January 2005 »