« January 2005 | Main | April 2005 »

March 20, 2005

河合奈保子・SUMMER HEROINE

健康的な水着写真をジャケットに持ってきているとおり、フォトジェニック・アイドルとして勝負に打って出たアルバム。

78Csh0028

題名どおり、夏向きなアルバムである(1982年7月21日発売)。全10曲中、7曲が竜真知子作詞・馬飼野康二作曲という、ヒット曲「スマイル・フォー・ミー」作家陣の曲で占められている。両氏のシングル作品である「ラブレター」「夏のヒロイン」も収録されており、レコードセールスをかなり意識したのではと思われるが、そうした販売方針とは別に、この後にリリースされる名盤「あるばむ」以降に繋がる兆候も見られる。

一つ目は、作家陣として、初めて、竹内まりや(作詞・作曲)を起用したことであろう。4曲目「アプローチ」がそれであるが、後の「けんかをやめて」に代表される、上質のティーンエイジポップスが、この曲にも体現されている。この曲の印象が制作陣に好評であり、後のシングル制作に繋がったのか、あるいは、すでに次期アルバム「あるばむ」のコンセプトが決まりかけていて、そのテストケースとして作られたものかは、想像の域を出ない。しかし、最初の竹内まりや作品が「SUMMER HEROINE」の中にあったことは、記録に留めておいていいだろう。

二つ目は、本格バラードへの挑戦である。5曲目「帰れない」や9曲目「Please Please Please」(いずれも竜真知子作詞・馬飼野康二作曲)は、以前のアルバムに多く見られた、伊藤アキラ作詞によるマイナー調ポップスとは、一線を画する仕上がりになっている。特に、「Please Please Please」は、最初スローテンポで始まり、次第にテンポが上がり、サビの部分ではボーカルが声を張り上げる形式は、中期・河合奈保子の曲構成に通じるものがあるのではないだろうか。歌詞も失恋することになった女の子の切ない心情を綴っていて、収録曲中ではj「ラブレター」に次ぐ名曲ではないかと思う。

終曲「もうすぐSeptember」では、夏の恋が終わったあとで、ひとつ成長した自分を見出す。アイドルカラーの強い「SUMMER HERIONE」であるが、ある意味、ボーカリストに向けての階段に足を踏み出し始めたアルバム、といえるだろう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

March 06, 2005

Eternal Ballads に寄せて 最終章

img015

女性シンガーの名バラードを集めた「Eternal Ballads」。女性の心模様を浮き上がらせる、最後の4曲を紹介する。

M-12「カボシャール」 田中好子
東京25時。数時間前に出会った男と女が肌を触れ合わせたあとで。
男は思う。女なんてちょろいものさと。その自信が幻想であることに気づかない。
女は思う。男なんて簡単なものさと。化粧としぐさと香りの罠に、男を絡めとっただけと。
男は女の媚薬の虜になったにすぎない。カボシャールは魅惑の香水。その意味は
「強がり」。強気な男こそが、この媚薬におちていくのだ。
大人の一夜をミステリックに表現した作詞「与詞古」(田中好子)の才能が感じられる。

M-13「窓」 桜田淳子
叶わない恋。報われない恋。思いを寄せる彼は、いつも恋人と一緒だ。そして私は
窓越しにそんな二人を見つめている。ああ、静かに燃え上がる恋心を、誰に託せば
いいのだろう。
幸せそうな二人。祝福されている二人。窓越しの二人の姿が次々と目に浮かぶ。
窓。どうして自分は窓の向こうに行けないの?彼の心の窓は私には開けられないの?
思い巡らす度に、記憶に現れる窓越しの二人の影…。
シャンソン調の楽曲が、悲しい片想いの心情を情感豊かに表現して心に染みていく。

M-14「シルエット・ロマンス」 大橋純子
女は恋するほどに美しくなる。だから恋を重ねた大人の女は、必然的に美しくなる。
そしてより美しくなるために、恋をしようとする。目的と結果が倒錯していくのだ。
ゆえに一度恋におちたら、美しくあるために、女は恋に一途になる。
まるで恋の海の中に身を沈め、陶酔するかのように。貪欲なのではない。ただ女性
を輝かせる魔法の重力が、女心を恋の深淵に引き込んでいるのだ。
来生えつこ・たかおコンビの耽美的世界に、艶やかなボーカルが加わり、名曲が
生まれた。

M-15「聖母たちのララバイ」 岩崎宏美
女性が花開くとき、それは恋をしているときと、母として愛を注いでいるときだろう。
特に男性にとって、ときに母性は心を慰め、童心に帰ることが出来る。真の母親は
別格として、恋人であれ妻であれ、男は自分でも気づかないほどに、母性を求めて
いるものだ。甘えられる存在、許してもらえる存在、すべてを委ねられる存在としての
母性。そう、すべての女性がマリアなのだ。
女と男の入り混じった世界に、信じることができるもの。それは、無限のいつくしみに
あふれた母性の姿ではないだろうか。
岩崎宏美の透明なボーカルは、俗世の穢れをさらうように澄みきって、聖母像を見た
思いさえある。女性の恋愛模様を綴ってきた、物語の結末にふさわしい選曲であろう。

| | Comments (1) | TrackBack (1)

« January 2005 | Main | April 2005 »