April 01, 2005

中島みゆき・この世に二人だけ

「予感」 (1983年3月5日発売)収録。

「無人島に行くとしたら何を持っていく?」 昔、よく友人と話したフレーズである。ある者は「本」といい、ある男は「女」と言った。では、「無人島に女性と二人だけ漂着したとしたら?」と問うてみる。多くの男は、(ある女性)を理想的な女に置き換えて、こう言うだろう。「そりゃあ、なるようになるものだよ。男と女だもの」。
それでは、と勿体つけて、クラスや職場で孤独がちになっている女性の名前を挙げて、「彼女と二人きりになったらどうする?」と、意地悪な聞き方をしてみる。多くの男が言うだろう。「それだけは勘弁して欲しいよなあ」。悪意のない、しかし趣味の悪い冗談話。

「この世に二人だけ」は、そんなエピソードが語られる歌ではない。共通しているのは、二人きりになった男性の側にとって、「私」は(決して)恋愛対象ではないということ。  「私」は彼を愛してしまっているのに。

彼にはイラストレータと思われる妻がいる。幸せそうな家庭。「私」は自分の情念のために、彼の家庭を壊そうとは考えない。愛妻を含めてこの世の人間が死んだとしても、「私」は彼に選ばれない。そう信じている「私」の希望はただ、彼をより近くに感じたいこと。その儚い希望が、彼の愛妻が書いた絵の載った本を、彼の苗字が活字になっているその本を、他にしかたなく、ためらいがちに、買い求めさせる。
それは心が弾む程のことでもない。むしろ無常感が「私」を包み込む。無人島のような街角の空気の中で。

最初から行き場を失ったままの愛を抱えつつ、投げやりの一歩手前で生きている女性の描写が鮮明だ。

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November 10, 2004

中島みゆき・悪女

  1981年10月21日発売シングル(CW::笑わせるじゃないか)収録。

 「マリコ」と「私」と「男」の壊れかけた三角関係の風景。曲調は明るいが、そのぶん切ない。

 冒頭、「マリコ」が忙しくて相手になってもらえないという「私」は、時間を潰すためだけに、夜更けの街を放浪する。何故か? ルームシェアか姉妹なのか、ともかく「私」と親しい関係にある「マリコ」に、元彼(かどうか疑問が残るが相当の好意を持っていたという観点から元彼と記す)を、奪われたのではないか。それを「私」は気持ちの中で整理できずに、「夜遊び」を重ねるのではないかと読む。「マリコ」と元彼の逢瀬を間違っても目撃したくないであろうし、(二人に対する)敗北感からの逃避なのかもしれない。朝帰りして、おそらく「マリコ」に吐露する捨て台詞は、勝手に想像するに<昨夜の男はろくでなしだね>。
 捨てられつつある女と元彼の新しい彼女が、親しい関係だったという設定は、「元気ですか」「玲子」(「愛していると云ってくれ」収録)にも見られよう。また、「泥は降りしきる」(「中島みゆき」収録)にある、雨の夜の街を流浪するさまにも、一脈通じるものがあるかもしれない。
 三角関係を扱ったみゆきさんの作品は枚挙に暇がないが、最後に、三角関係の後日談を語る「南三条」(「歌でしか言えない」収録)を、特筆しておきたい。些細でありながらドラマチックな展開は、一般的な「みゆき節」とは異なった聴後感を残すものである。

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October 28, 2004

中島みゆき・Maybe

 「歌でしか言えない」収録。

 都会で働くキャリアウーマンらしき人物を題材に、困難に遭いながらもあきらめず、夢みて生きる姿を応援する。

 詞の中で、主人公は、パウダールームにいて、おそらく自分の姿を鏡に映し、自己暗示をかける。人は苦しいとき、自分の姿を鏡に写して、自分を客観視し、時に蔑み、時に励ます。前者の例では「あわせ鏡」(「臨月」収録)の世界が、代表例だろうか。苦しい時の自分の姿に、私は大丈夫と言い聞かせるくだりは、痛ましさの中に一筋の希望の光を感じさせる。

 中島みゆきの詞世界では、こうした、悲惨でぎりぎりの局面からも這い上がろうとする、人間の逞しさを表現したものも多い。例えば、「ファイト」(「予感」収録)、「肩に降る雨(「miss M.」収録)など。辛さに直面する姿を、むしろ積極的に人生に向き合う姿として捉えるスタンスは、ベートーベンの「運命」(交響曲第5番)に通じるものがあるのではないか。

 困難の克服というテーマは、上辺だけポップな流行り歌よりも、ずっと明るい。

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October 26, 2004

中島みゆき・プロローグ

 みゆきとは(歌姫)中島みゆきさん(以下みゆきさん)のことである。奈保子ちゃんと並んで、私のお気に入り二大巨頭の一方であるみゆきさんについて、これから、このblogでも、少しづつ語ろうと思っている。

 けど、正直いうとこの決断には、しばらく躊躇していたのである。歌詞の掲載が著作権上制限されているなかで、みゆきさんの歌の世界についての想いを、第三者にどう伝えようか。うまく表現できなければ、却ってみゆきさんのイメージを壊してしまうのではないかと。

 そんなとき、奈保子ちゃん繋がりで訪ねた blog の作者の方が、実はみゆきさんにも詳しかったことを知り、「奈保子 AND みゆき」という<同好の士>が世間に二人以上いることに驚くとともに、語ること・発信することへの勇気をもらった次第(もしかしたら、それが縁で三人目が見つかるかもしれない!)。

 そんなわけで「奈保子ちゃん」に続き「みゆきさん」の世界について、拙文を載せようと思うのである。「奈保子 AND みゆき」の方、もしいらしたらコメントください。

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